ある記事が目に止まりました。 掲載しておきます。
その1 《精神疾患と遺伝子》
精神分裂病や気分障害(躁うつ病)などの精神疾患に遺伝的要因の関与していることは,これまでの家系研究,双生児研究,養子研究などの臨床遺伝学的研究から明らかにされており,同じ家系内に精神疾患の罹患者が存在する場合,その罹患者が近親であればあるほど,その人の発症危険性は高くなるという知見が集積されており,これらの知見を基に,精神分裂病や気分障害(躁うつ病)等の精神疾患についてはその発症の原因となる,あるいはそれに関連する遺伝子を見出そうとする遺伝子解析研究の試みが現在世界中で行われています。
しかしこれまでにこれらの精神疾患の原因遺伝子あるいは感受性遺伝子を同定するために数多くの研究が精力的になされてきたにもかかわらず,精神疾患については原因であると特定できるような遺伝子は見出されておりません。
これまでの研究で得られた他の知見としては,たとえば同じ遺伝子をもつ一卵性双生児を例にとると,そのうちの1人が精神分裂病に罹患した場合に,もう1人の双生児が精神分裂病に罹患する確率は約50%と報告されています。
これは精神分裂病の発症率が1%にも満たない一般人口集団と比べると随分高い値であることは事実ですが,それでも100%の一致率ではありませんので,精神分裂病の発症には遺伝要因だけではなく,環境要因も重要な役割を果たしていることが知られています。
気分障害(躁うつ病)についても同様の研究結果が報告されています。
このように精神疾患の多くは,一般的にその人の生まれながらの体質(遺伝素因)と生活習慣などの影響(環境因子)との両者が複雑に組み合わさって生じていると考えられています。
遺伝素因と環境因子のいずれか一方が病気の発症に強く影響しているものもあれば,両者が複雑に絡み合って生じるものもあると考えられています。
その2 [科学技術一般] 細胞増殖遺伝子の欠如が統合失調症の発祥原因と確認 (毎日新聞, 10/14)
岐阜薬科大(岐阜市)薬効解析学研究室の原英彰教授(51)らの研究グループは14日、人間の誰もが持つ細胞増殖遺伝子「HB−EGF」の欠如が統合失調症(PPI障害)の発症原因の一つであることを突き止めたと発表した。同日付の米国科学誌「PLoS ONE」に掲載。HB−EGFは、がん研究などで注目されてきたが、精神疾患との因果関係を示したのは初めてという。
原教授らは、前脳のHB−EGFを別の遺伝子に取り換えて8週間が経過したマウスと、正常なマウスを比較。遺伝子取り換えでHB−EGFが欠損したマウスは、落ち着きなく動き回り、コミュニケーション能力や記憶力の低下がみられた。これらの行動は、統合失調症に特徴的な行動だという。
また、欠損したマウスは神経に伝達される刺激を受け取る神経細胞「樹状突起」につながっている細胞の一部「スパイン」が正常なマウスの半分程度に減少。神経伝達物質「モノアミン」の分泌量も正常なマウスより約20%減少していた。スパインやモノアミンが減少する病態も統合失調症患者に多くみられる。原教授によると、これほど多くの統合失調症の病態につながる遺伝子の特定は初めて。
原教授は「統合失調症は、原因が分からないために個々の症状を治す対症療法が中心だった。今回の発見は、統合失調症を本質的に治す新薬開発につながると思う」と話している。
新薬はいつできるでしょうか? ちょっと期待です。